1. ビザ免除制度(VWP: Visa Waiver Program)の概要


(1) ビザ免除ってなに?

  アメリカ合衆国のビザ免除制度(Visa Waiver Program; VWPと省略)は、「条件を満たしていれば(←ここが大切)、アメリカを訪問する際にビザを取得しなくてもよいことにしてあげましょう。」というものです。

 現在は、アメリカに旅行するときにビザのことを気にする人はあまりいないかもしれませんが、この制度は1986年から試験的に導入された制度で、恒久的な制度になったのは実は2000年になってからです。何故か?それは、この制度によって『アメリカから出て行かなくなる外国人』が増えては困るからです。このため、アメリカ政府はちゃんと統計をとっていて、違反する人が多い国については、ビザ免除の対象国から外すことが規定されています。実際に、アルゼンチンは1996年7月からビザ免除制度の恩恵を受けていたのですが、2002年になって対象国から外されてしまったという経緯があります。

 日本は、はじめからアメリカのビザ免除制度の対象国となっていますが、それまでは全員が全員、わざわざアメリカ大使館・領事館からのビザの発給を受けなければなりませんでした。お隣の中国や韓国はまだアメリカのビザ免除の対象にはなっていませんので、中国人の方や韓国人の方(グアム訪問を除く)は、例え日本に在住している方であっても、アメリカに旅行するためにはビザを取得しなければなりません。日本人は恵まれているわけです。

 ビザ免除制度ができたおかげで、取得しなくても良くなったビザはB1/B2(観光・商用)ビザです。ですので、勉強目的であるとか、アメリカの会社に雇用されるという場合には、ビザ免除でアメリカに入国するることはできません。


(2) 必要なものはなに?

 一般的な観光旅行や商用を目的として、空路でアメリカに入国する場合に例外なく必要なものは2つあります。一つは帰りの航空券、もうひとつは、アメリカの出入国管理カード、I-94W(見本はこちら)です。EDカードと呼んでいる人もいるようですが、アメリカの場合はI-94Wというのが正式名称ですので、この機会に覚えてしまって下さい。そうそう、空路とはいっても自家用機で飛ぶ場合には、ビザ免除では入国できません。

 このカードは入国審査を受けるまでに記入しておかなければなりません。「記入しておかなければならない」というのは、実はちゃんと米国移民国籍法に書いてあるんですよ。ということは記入していない人は、入国拒否になっても文句を言えないということになります。まあ、実際は入国審査官に怒られるだけで済むでしょうけど、このI−94Wに記入を済ませて署名をするということが、実は法律的にとても重大な意味があるのです。この点については、あとで少しだけ説明します。


(3) ビザ免除での入国許可

 ビザ免除で入国すると、パスポートとI−94Wに入国のスタンプが押され、そこに滞在期限が記入され、商用の場合には「WB]、娯楽目的の場合には「WT」と記入されます。滞在期限は、通常は90日間の滞在日数が与えられます。この入国スタンプのことをビザと間違えていらっしゃる方が多いのですが、これはビザではありません。

 パスポートにホチキス留めされるこのI−94Wの半券は、皆さんがアメリカに滞在することを正式に許可されていることを証明するとっても大切な書類なのですが、それには長い番号が印刷されています。これは、入国するときに切り取られた半券とマッチングするためのもので、ちゃんと期限内にアメリカから出国したかどうかを管理しているわけです。

 90日の滞在期限は、事故や急病で動けなくなった場合など特殊な事情がない限り、延長することができません。また、入国後に他の滞在資格に変更(例外アリ)をすることもできませんので、ご注意下さい。90日というのは、「それだけあれば思わぬ事故があっても十分でしょう?」程度の意味に考えておくほうが安全だと思います。90日フィックスでチケットを買われる人もいるようですが、フライトがキャンセルになって、接続ができなくなり・・・となると、なんだかややこしいことになりそうです。「そんなのは、自分の責任じゃない?」確かにそうですが、もし当日出発できなくなってしまったら、記録上は90日をオーバーしてしまいます。次回にアメリカに飛んでいったときに「あの時は、フライトがキャンセルになった」と移民官を説得できますか?


(4) お隣のカナダ・メキシコやカリブ地域などに出国する場合の注意

 ビザ免除にて米国に入国後、一時的にカナダ、メキシコ、カリブ諸国を訪問して再度米国内に戻ってくる場合には、最初に米国に入国した際に与えられた滞在期限までの滞在が許可されます。つまり、これらの国に一時的にアメリカから出国しても最初に与えられた90日の滞在期限は延長できない、ということです。このような方法で滞在期間を90日以上に延長しようとすると、入国拒否となるケースが多いため、絶対に行わないで下さい。カナダやメキシコに一時的に出国する時には、すぐに再入国する旨を伝えて、パスポートに貼り付けてあるI−94Wはそのままにしておくようにして下さい。


(5) 日本に帰国する際の注意

 ひとつだけとても大切なことがあります。それは、I−94Wをちゃんと返却することです。特にカナダに出てカナダからそのまま日本に帰国するときは、カナダ側に出る際にこの書類を提出しなければなりません。日本に帰ってきたら、パスポートについたままだった、なんてことのないようにお願いします。

 もしも持ち帰ってしまったら、ちゃんと返却しましょう。返却の方法は、アメリカ大使館のホームページに丁寧な説明がありますので、その指示に従ってください。返却しないと、記録上あなたはいつまでもアメリカに滞在したままになってしまいます。


2.ビザ免除の落とし穴


(1) ビザ免除は、交換条件だった?

 渡米の頻度とトータルの滞在日数が極端に多い方は、実はビザ免除では入国させてもらえない場合があります。

 その説明の前に、先ほどのI-94Wについてもう少し説明しておきましょう。ビザ免除の場合、入国できるかどうかは、入国審査官の一存で決定されてしまいます。実はこのことは、I−94Wの裏面にしっかりと説明されています。米国移民国籍法では、入国の可否の判断基準は数字によって規定されているものではなくて概念的なものですから、入国審査官によって判断に幅があのですが、それでも、入国審査官の決定に対しては従わなければならないのです。そして、「入国審査官の決定に従います。」と宣言してアメリカに入国しようとするのが、ビザ免除制度なのです。「え?」と思われた方は、I−94W裏面をよくお読み下さい。この書類にサインをして入国審査官に提出したのは、あなた自身なのです。ビザを持っている場合に使用するI−94には、このような記述はありません。

 先ほど、「I−94Wに記入しておかなければならない」と説明しましたが、その意味がこれだったのです。何だか段々と法律のニオイがしてきました。

(2) 別室での調査

 これは、ビザ免除だけでなくてビザを持っている人も同じなのですが、入国審査の時に、不審な点があると思われると別室に通されてさらに詳しいことをいろいろと聞かれることがあります。別室に通されるだけで、トラブルと思われる方が多いと思いますが、やましいことがなければ何も怖がる必要性はありません。

 で、アメリカでの滞在日数が多くなってくると、別室に通される確率が高くなってきます。滞在日数が多いといっても普通に観光している場合、そうですねぇ、年末年始とゴールデンウィークとお盆休みと、おまけしてもう1回ぐらいのそれぞれ2週間ぐらいアメリカに滞在したとすると、年間4回の合計8週間になりますね。これくらいの滞在期間であれば、まあ、別室に通されることはないでしょうし、他に理由があれば別ですが、入国拒否になるようなことは無いはずです。ですので、普通に観光旅行を楽しんでいる程度であれば、怖いこともなんでもありませんので、どうぞご安心下さい。

(3) ロングステイのくり返し

 普通の観光目的とは思えないほどのロング・ステイを何度も繰り返そうとすると、入国拒否になってしまう可能性が出てきます。アメリカに恋人がいるという方やハワイにコンドを所有している方々などは、一度の訪問での滞在が長くなりがちだと思います。もちろんこういった理由で、ビザ免除を使って入国するのは全く問題ありませんが、無制限に繰り返すことはできない仕組みになっています。この点についてアメリカ大使館のホームページには「移民審査官が非移民旅行者としての条件を満たしていないと判断した場合は入国が許可されません。」とだけ書かれています。

 そこで「非移民旅行者とはなんぞや?」ということになるわけですが、ここまでくるともう移民国籍法の解釈の世界になってしまい、概念的でわかりにくい話になってしまいます。ですので、とりあえずは、「入国審査官の目からみて、住んでしまっている状態ではないか?」と疑われてしまうほどロング・ステイを繰り返すことはできない、とお考え下さい。

 また、商用目的の場合には日数だけの問題ではなくて、「現地での業務内容はビザ免除の範囲内か」という別の視点が必要になりますので、もう少し事情は複雑です。


3.入国拒否になってしまったら


 ビザ免除制度を利用してアメリカに入国しようとして、入国拒否になってしまった場合には、そのまま素直に引き返すしか方法はありません。これは先ほど説明したとおりです。そして、入国拒否とした入国審査官の決定を覆す唯一の方法は、帰国してビザを取得するしかありません。

 入国拒否になると、217.4(a)(1)、217.4(b)(1)、212(a)(7)(A)(i)(I)といったアルファベットと数字の組み合わせがパスポートや受け取った書類に書かれます。この数字とアルファベットの組み合わせは、米国移民国籍法と連邦標準規則の条項の番号です。入国が拒否された場合には、その根拠にもよりますが、帰国後に大使館・領事館でビザを取得できれば、あらためて渡米することができます。

 入国拒否になるのは、「アメリカに住んでしまっているのではないか」と思えるほど長期間滞在している場合や、商用の方であれば、「商用とはならないような業務を行ってしまっている」場合がほとんどだと思います。いずれの場合も、どのあたりに境界線があるかは、理屈っぽくて概念的な話になりますが、これからビザを申請しようとお考えの方向けには、アメリカのビザ制度の基本的な枠組みを説明した資料『アメリカビザ入門』(A4版9ページ)をこちらに公開していますので、この機会にぜひ参考にしてみて下さい。


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